2017年2月末でオリジナルキートは廃番になりました。

オリジナルキートはその華奢な仕様の為、通常の中古売買では買い手の正しい判断が付きかねる可能性があり、不当な値付けなどトラブルになる可能性があります。中古品に関しましても、オリジナルキート取扱店での売買を推奨します。
*他シリーズと区別するため初代シライキートをオリジナルキートと呼んでいます。

新シリーズ Shirai Keet Nue が発売されています。

アーカイブとしてWEBページを残しておきます。

コンセプトはアコースティックドラム

grotta K-KIT18

現在、主流とされるマルチマイクを前提としたドラムを「エレアコ」とした場合、アコースティックなドラムセットとは?というコンセプトで開発しました。

音響機材を使わない20-40人に向けたライブを想定し、キットバランスが取りやすく、小さな音量でもしっかりとした音圧で反応するドラムセットが、ドラマーの演奏する場を広げます。

Keet(キート)という名前の由来

小寺良太 & Keet

Keetという名前の由来ですが、試作1号機を使っている小寺良太さんから、このドラムの素直に響くキャラクターから、「素直」みたいな意味があると良いよね。というアイデアを頂き、「素」の語源を調べたら、(学術的に正しいかは分からないのですが)「白絹」のような意味があると。そこで白絹に関係する言葉から、白絹→白糸→生糸と連想していき、きいと→キートという名前になりました。ラベルの形をよくみると…ラベルが「糸巻き」の形になっています。(写真は小寺良太さんのレコーディング現場)

試作から製品化までの道のり

伊藤大地 and Keet 試作機

沢山のプロトタイプを作り、パーツ配置や、細かいところでは、バスドラムのウッドフープの内側のエッジの取り方まで、ドラマーはもちろん、他のパートのプレイヤーやエンジニア・テックの方の意見を取り入れ、完成版に至るまでに様々な仕様変更をしました。
アコースティックドラムとしてのドラムキットバランスがとれていれば、マイキングした場合も問題なく使えることも分かりました。(写真は伊藤大地さんにレンタルしていたプロトタイプです。)

Keet 伊藤大地

試作で一番大変だった事は「塗装」です。音が変わることを知っていましたし、自分自身の経験上分かっていると思っていましたが、塗膜による音の変化は予想以上でした。私が想定しているのは20-40人キャパくらいのライブを生音で心地よく…という狙いより音が大きすぎたり、逆に音がやわらかすぎてコシが感じられない仕上げになることもありました。塗ってみないとわからないですし、塗装には乾燥の時間がかかるため、すぐに試すことができません。完成品の塗装は、しっかりとシェルの表面をパリっと硬くしてやらかなシェルの材料との組み合わせで、程よい輪郭を得る事ができました。(写真は伊藤大地さん所有のKeetです。)

ドラムヘッドやフープの強度を考慮して、「アコースティックドラム」という考え方で、ドラムキットバランスを演奏者が取りやすい楽器を目指しました。

特に小さな音からボトムのヘッドが響くという点を大切にして、サウンドチェックもスティックではなく、PromarkのBroom Stickを使ったチェックからはじめました。タムスタンドが付属しますが、セッティングの自由度や耐久性は、あまり高くないものを使っています。耐久性よりも、音と軽さを第一に考えた結果です。

客席側から見える所にロゴマークが無い理由

Keet Label

通常、ドラムセットやエレキギターでは見える位置にロゴが描いてありますが、バイオリンやクラシックギターは、ブランドロゴを外側に描いてありません。Keetもアコースティックドラムという事で、外側にブランド名は付けないことにしました。
胴体の内側にデザイナーの宮下ヨシヲさんに作って頂いたKeetのロゴが入ったらラベルが付きます。
Keetの製品コンセプトや名前の由来を汲み取り、素晴らしいロゴを作っていただきました。
打面ヘッドには、KOTA STAMP WORKSさんが作ってくださった手作りのスタンプでロゴが入ります。

生産工場

Keetを作る工場は、浜松のNegi Drumsさんにお願いして作って頂いています。ドラムセットが出来るまでに沢山の試作品、試作から量産できる形に持っていく為のアイデア提供など、とてもお世話になりました。エッジの形状を手仕事で行う必要があったり、塗装自体も特殊な塗装方法になっていたり、技術と根気が必要な仕事を素晴らしいレベルで行っています。現在、Negi Drumsさんは工場の中を公開していませんし、通常生産している工場を公表しないケースも多いことから、Negi Drumsで作っている事を言わなくても良いのでは?と、ネギドラムさんからご提案頂きましたが、生産して下さる方はとても大切、ラベルにもお名前を入れさせていただきました。

タムタム

材質を公表しない理由

20150212-20150212-_MG_5604

シェルの材料は、高級ではなく、価格が安い部類の木材です。しかし、ドラムシェルを作る為の合板となると、意外と無く、試作中に大幅に価格が上がるという事態も起き、代替の材料を考えたりもしたのですが、価格が上がってもKeetはこの材料で行くと決めました。

「材料は何ですか?」と聞かれる事も多いのですが、シェルの成形方法など全体のバランスで音が変わります。材質以外は同じように見えるドラムも、よく見ると厚さやエッジシェイプが違う事も多く、「この材料はこのような音の傾向」という事を言えないのが実際のところなのです。スペックも大切な要素ですが、材質がわからないことで、固定概念を持たずにドラムの音に接するのも良いかもしれないと思い、公表しないことにしました。

バスドラムを持つと、とても重量が軽く、22″のバスドラムで6kg弱。18″のバスドラムは約5kgと14″x6.5″のブラスのスネアドラムと大体同じくらいの重さです。

スペック

タムタム・フロアタム・バスドラム

柔らかく軽い材なので、ヘッドを外してシェルに力をかけると、たわみます。バスドラムに人が乗ったらシェルが割れると思います。バスドラムに重量がかかることから、バスドラムにタムをマウントすることが出来ません。楽器として普通に扱って大丈夫な耐久性はありますが、乱暴には扱わないでください。

4ply 5mm シェル (K-BD2208のみレインフォースメント付き)
トリプルフランジ 1.6mm プレスフープ (バスドラムはウッドフープ)
バスドラム・フロアタム  8テンション
タムタム 6テンション
打面コーティングヘッド
裏面クリアヘッド (バスドラムは両面コーティングヘッド)

スネアドラム

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ドラムセットは、タムタム、フロアタムなどセット全体が共鳴することで深みのある音になります。「バスドラムとスネアドラムだけで演奏することも想定しているので、タムタムの共鳴が無くても深みのあるサウンドが出るスネア。」という基準で試し、レインフォースメント(補強)を付けた深さ5.75″のスネアドラムが基本仕様になりました。

4Ply5mmシェルレインフォースメント付き
トリプルフランジ 1.6mm プレスフープ
8テンション
打面ヘッド:コーティングヘッド
スネアサイドヘッド:スネアサイドヘッド(クリア)
スネアワイヤー:20本

Shell Set And Individual Drums Price List

Special Thanks

製品化までにご協力頂いた皆様ありがとうございます。

APOLLO COFFEE WORKS
伊藤大地(細野晴臣、星野源、安藤裕子、地球三兄弟、Salyu、坂本美雨、ハシケンmeets伊藤大地、サンフジンズetc…)
KOTA STAMP WORKS(スタンプ製作)
小寺良太(椿屋四重奏ドラムリョウタ→手島大輔trio invite小寺良太、音速ライン、hanaboy、スネオヘアー、横沢ローラetc… )
サカモトツカサ
チボ・マット
土屋 真信(オフィス インテンツィオ)
土田”つっちー”嘉範(ドラムテック)
NAGOYA BLUE NOTE
NARCO
Negi Drums
的場 誠也(ドラムテック)
宮下ヨシヲ(デザイナー)
山村牧人(ライター・インストラクター)
山本拓矢(bohemianvoodoo)
ワイルドフラワー・スタジオ
… and more

*敬称略

撮影協力
APOLLO COFFEE WORKS 愛知県豊橋市西高師町沢向20  (MAP)
Cafe Green Leaves 愛知県豊橋市 牟呂外神町20−1  (MAP)
grotta 愛知県豊橋市駅前大通1丁目114-105 / TEL 0532-54-1762  (MAP)
The Roots